オイルロード~1万キロの旅に密着~ オイルロード~1万キロの旅に密着~

オイルロード
~1万キロの旅に密着~
OIL ROAD

早わかり共栄タンカー

オイルロード。それは遠くアラビアから日本へ「原油」を運ぶ海上の道のことをいう。中東諸国には富を、そして日本には産業と生活に不可欠なエネルギーを運ぶ現代世界の大動脈だ。

かつては、世界の東と西を繋ぎ、両国の交流に貢献したシルクロードという交易路があった。
21世紀、オイルロードは世界の東と西を海上で繋いでいる。シルクロードより長く険しい道のりだが、共栄タンカーは今日も日本の産業や生活に不可欠なエネルギーの物流を支えるため、走り続けている。

中東 ー 日本1万キロ

UAEフジャイラ沖でのレーダー映像

UAEフジャイラ沖でのレーダー映像

オイルロードの道のりは約1万キロあり、これは実に、地球全周の4分の1強に相当する。長い旅路には天候の変動や戦争・武装海賊からの襲撃などと、さまざまな危険を伴う。

長い道のりの先にある中東地域は世界有数のエネルギー供給地だ。ペルシャ湾付近の沿岸には多くの原油積み出し港が立ち並んでおり、日夜タンカーが行き来している。

イメージ画像

ペルシャ湾から出るとオイルロードはアラビア海からスリランカ沖合、そしてインド洋へと続く。スマトラ島北岸に達すると、いよいよオイルロードの最大の難所、"魔の海峡"マラッカ海峡がやってくる。

この海峡は狭く水深も浅いため、これまで多くの海難事故が発生している。
迂回のために、さらに南のロンボク海峡~マカッサル海峡にルートを設定すると、片道でおよそ2200キロの離路となってしまう。船の燃料費などコスト上重大な損失が出るため迂回するわけにはいかないのだ。

京葉シーバース

京葉シーバース

マラッカ海峡、シンガポール海峡を抜けるとタンカーは一路日本に向けて北上。そしてオイルロードの最終到達地点、日本が見えてくる。

この海峡は狭く水深も浅いため、これまで多くの海難事故が発生している。
日本には現在、千葉、四日市、喜入など北から南まで数多くの原油受け入れ基地がある。各地で荷揚げされた原油は、貴重なエネルギーに、あるいはさまざまな石油化学製品になって利用される。

日本から長旅のスタート

専用タンク

この部分がバラスト水を積む専用タンク
バラスト水を積むことで喫水を確保し、船体が浮かび上がることを防ぎ正確にスクリューの力を水に伝えることができる。また風や波の影響も受けにくい。

日本から中東ペルシャ湾への往航では、バラスト水だけ積んでいる。バラスト水とは船底に積む重しとして用いられる水のことをいう。バラスト水を積まないと船体が浮かび上がってスクリューの力を水に伝えにくい。
往航にも多くの苦労があるが、タンカーとその乗組員が本格稼働する、復航にさらにスポットを当ててみよう。
復航のスタート地点はラスタヌラ港である。

ラスタヌラ ー 原油を積み込む

ラスタヌラ係留図

ラスタヌラ係留図

ラスタヌラ港は中東最大の産油国サウジアラビアのサウジアラムコ社の石油積み出し港である。
原油の積み込みは船体を桟橋に着桟後、桟橋にある積み込み用パイプに接続し、陸上の送油ポンプで油を積み込んでいく。KYO-EIの全タンクを満杯にするには一昼夜以上もかかる。

最も神経を使うのは「積み切り」といってタンク内に過不足なく油を積む、最終段階の作業だ。各タンクの油量に大きな片よりがあると船が傾き、またタンクが一杯になっても油を受け入れつづければ大きな油漏れ事故につながる。
タンクいっぱいに原油の積み込みが完了したら出港だ。

出港 - エンジンと推進力

左:メインエンジン 右:エンジンを遠隔操縦する主機遠隔操縦装置

左:メインエンジン 右:エンジンを遠隔操縦する主機遠隔操縦装置

ラスタヌラ港から出港し、沖合へ出ると、いよいよKYO-EIの主機関「MAN-B&W 7G80ME-C 9.2型 ディーゼルエンジン 36,135馬力」のうなりが高まる。

約30万トンの原油を積んだ船体を時速28.7キロ(15.5ノット)のスピードで進むことができるエンジンはKYO-EIならではだ。
これからペルシャ湾沿岸を進み、ホルムズ海峡を抜け、一路日本を目指して進む。

大海原を走る

KYO-EIはインド洋を全速力で東進。“魔の海峡”マラッカ海峡まで、まだ数日の余裕はあるが、原油を積み24時間走り続けているタンカーには危険要素がたくさんある。完全に気を抜ける時間というものは存在しない。

大海原を走る
大海原を走る
大海原を走る

※画像をクリックすると動画が再生されます(大海原を航行中の様子)

魔のマラッカ海峡

魔のマラッカ海峡

インド洋を越えるといよいよマラッカ海峡にさしかかる。この海峡は狭く浅く、かつて何隻もの船が座礁し、あるいは衝突事故を起こして沈んでいった"魔の海域"である。

マラッカ・シンガポール海峡は、マレー半島とスマトラ島に挟まれたおよそ800キロの海峡である。幅はマラッカ港付近でおよそ48キロ。全域が水深21~45メートル浅所で、ルートによっては水深13メートル程度という海域が随所にある。多くの船舶が入り交じる航路であり、潮の流れも激しいため、慎重に進まねばならない。

※画像をクリックすると動画が再生されます(シンガポール海峡航行中の様子)

海賊あらわる!

海賊乗り込み防止ワイヤ

海賊乗り込み防止ワイヤ

このマラッカ海峡、実はもうひとつ悩みの種がある。“海賊”だ。本船は幸い襲われた経験はないが、毎年多数の船が被害にあっているのだ。
対策としては、ワイヤを甲板の塀に張り、侵入できる扉は全て施錠。ウイングに見張りを置き、不審なボートを発見したら強力な信号灯で照射し、ホースで高圧の水を掛けるなどがある。
マラッカ海峡を通航することは、いろいろな意味で危険極まりないことなのである。

日本へ到着。入港 ー 京葉 シーバース

京葉シーバース着桟中

京葉シーバース着桟中

灼熱のペルシャ湾からおよそ20日間、ようやく日本に到着。

入港し、シーバースに近づいたら本船の20本もの係留ワイヤーを固定して着桟完了。原油の積み込みとは逆に、船の送油ポンプで、海底のパイプラインを介して陸上のタンクに原油を送り込む。

シーバース:港の沖合に設けられた桟橋あるいは浮標。タンカーなど超大型船を係留して、原油の積みおろしを行う。

再び、オイルロードへ

再び、オイルロードへ

積み下ろしの作業を終えたKYO-EIは休む間もなく再びオイルロードの旅に出発する。
KYO-EIは年間約7回もの航海をし、原油を運び続けている。

日本は原油のほとんどを輸入に頼っているため、KYO-EIは今日も休まずオイルロードを走り続けているのだ。